こちら新宿中央署刑事課
 ホシは何か、金品以外のものを奪いたかったと思われる。


 坂野はそう勘繰(かんぐ)っていた。


 今夜の捜査が終わって、他殺と断定されれば、近々新宿中央署に捜査本部が設置される。


 そして永嶋雄一朗が死体で遺棄された事件の真相が明かされると思う。


 その日の明け方頃、捜査が一段落し、日付がとうに変わって一月四日になっていた。


 坂野が運転するパトカーが回転灯を灯(とも)さずに、一気に署へと向かう。


 当直室に泊り込みとなるようだった。


 鑑識係主任の小笠原が、害者転落の際にホシと揉め合っていたと思われる屋上の手すりに付いていた指紋を検出し、署に戻ってコンピューターを使い、照合する。


 一致するものがあった。


 前島実業専務取締役の古河村(こがむら)比呂氏(ひろし)の右手五本の指の指紋と、検出されたそれが見事なまでに重なり、照合が完了する。


 小笠原がその旨、メールで坂野や岩永、西谷ら捜査員に伝えた。


 新宿での変死体発見は、会社内部でのいざこざが原因かもしれないと考えられる。
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