独身マン
「あ、さえちゃんさ~(本人の前で名前を呼ぶときは、抵抗感からとなれていないのでぎこちない)、バレンタインチョコレートとかって、やっぱ彼に手作りなの~?」


「はい。 もちろんですよー」


「ふ~ん。 いいなぁ~」



この場合、「いいなぁ~」は“ウラヤマしィ”ではなく、“自分も欲しい”の意味である。



さえは「ははは」と笑い返しただけで、何も言ってこなかった。 残念。



「ま、どうせ甘いもの苦手だしいいんだけどね~」


(じゃあなんで「いいな~」なんていったんだよ)



強がりもいいところだ。 しかしさえは微笑みつづけた。 優しい笑顔の真の顔はあざ笑っているが。



「春海ちゃんは誰かにあげるのかなぁ?」


「さぁ? 聞いたらどうですか?」


「え~! それはちょっとできないよー! どうか恵んでくだせーってか?!」


「はい」



顔と違ってさえの声の反応悪し。 正義と笑いのツボが合わないらしい。 というよりも、正義相手にさえは笑えなくなっている。 どうでもいいらしい。
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