独身マン
休憩から戻っても正義の気分は悪かった。
きっと一日中悪い。
しばらくこの調子だと思う。
「国枝さんって、仕事するの早いね」
「あのねー、わたし物覚えいいんですよ」
拓也とさえの話し声は、事務所のドアを開ける前から聞こえていた。
今日初めて出会ったのに、お前らいったいなんだ? というくらい仲好しそうに喋っている。
たぶんそれは拓也もさえも、異性の扱いが上手なのかもしれない。
(あーぁ、消えろよ)
正義は拓也とさえの会話が耳障りでイライラする。