独身マン
蜘蛛女

さえが入社して一ヶ月くらいたった。
さえはまだ学生生活が抜けていないのか(四大なら確かにまだ三年だが)学生気分でいる。
持ってきているペンケースも、中に入っているペンも、彼女の持つアイテムはどこで買い集めたのか不思議なものばかりだ。


ある日、さえに可南子が尋ねた。


「これ なんなの?」

背後から手を延ばし、ディスクの上に置いてあった手帳らしきものを手に取る。 後ろから声をかけてくるのが可南子の特徴だ。 そしてふんわり甘い香りがする。


「手帳です★」


「手帳?」

それは不思議な柄で、枯れ葉の様な生地。 用紙部分は黄ばんでいる。


「バナナの皮で作られてるんです。 皮を乾燥させて貼り付けたんだと、思う」


「へ~」

可南子はジロジロとバナナの手帳をながめた。


「あんた、これ どこで買ってくるの?」


「ふるぎ」


「この筆箱も?」

その布製のペンケースは、レトロなタッチで描かれた、蛍光ピンクをバックとしたマーガレット柄だ。


「60年代の生地で作られてるんですよー」


「はぁー」

可南子は感心しながらバナナ手帳をさえに返した。
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