独身マン
「私、トイレいってくる」


春海が席を立った。



(俺も一緒にいこうかなぁ~。 そんなことしたら、え? なにあの二人~ってなっちゃうよなぁ(笑)。 それで俺たちがいない間にー、美紀子ちゃんが昨日、俺と春海ちゃんが歩いていた事をみんなに話して~)



正義の妄想はどんどん激しくなっていく。



「あ、春海ちゃんの携帯電話にカワイイコアラがついてる」



さえは、春海が置いていった携帯電話を手にとった。


ストラップ代わりにしては大きいコアラの人形がついている。



「オーストラリアのお土産? いいなぁ、海外いきたい」



するとあかねがさえに尋ねた。



「行く人いないの?」


「いないよ~。 友達も貧乏だし」


「ち・が・う。 好きな人は?」


(ん? なになに?)



正義は会話に入っていなくとも、しっかりそういう話は聞いている。
< 89 / 258 >

この作品をシェア

pagetop