雪女の背に続け

「あいつはそれを?」

「知らない。大天狗は山妖怪の帝王だ。町妖怪から恐れられ、憎まれている存在が父だと私からは言えなかった」

何よりも、恭子は恐れていたのかもしれない。
自分を慕う烏丸のことを、失いたくなかったのだろう。


「私は、卑怯だな」

「…………かもしれないな」

そう言って、薄く冬矢は笑った。

ついに知った大天狗と恭子の間の確執。
ならば、傷を治すのは簡単だ。

大天狗もまた自身の息子を奪われ狂ったのだとしたら、息子に会わせればいい。
誤解も、憎しみも、すべての罪を一からやり直そう。


「安心しろ。あいつは、お前のことを馬鹿ほど慕っている。お前のもとからいなくなりはしない」

「そう……か……。そう……だな」

そう言って少し恭子は笑った。
少し吹っ切れた気がする。


「今度、烏丸を会わせる。何もかもを終わらせよう」

「ああ」



それから、店に戻ってきた烏丸に真実を告げた。
少し烏丸は驚き、そして納得した。

「僕は、一人じゃなかったのか……」

「すまない。私は、お前から父親を奪った」

「謝らないでくれ、恭子さん。僕は、あなたに会えてよかったんだ」

烏丸は笑う。

冬矢の言ったとおりだった。
馬鹿みたいに、烏丸は恭子を慕っている。
恭子を拒絶することも憎むこともなかった。

そして、また大天狗に会うことにした。


< 39 / 39 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:3

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

妖怪外伝百鬼夜行

総文字数/45,464

その他73ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
この間完結した『雪女の息子』 そこに登場する百鬼夜行メンバー 恭子、烏丸、洋子、すずめ この四人に加え、陰陽師の娘・陽 計五人のスピンオフ短編集です。 一部短編ではないですが、 どうぞお楽しみください。
結婚式

総文字数/10,008

恋愛(その他)20ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
彼は結婚する。 花嫁は異国の姫。 分かってる。分かってる。 私は、ただの使用人だもの。 身分違いの恋なんて叶わない。 どんなに思い合っても、 叶わない。 伯爵 アスラン・レイナード 「俺は好きだぞ」 × 「私だって……」 ジュリア 使用人 彼は結婚する。 花嫁は異国の姫。 私は二人を祝福しなくては。 幸せになってと、笑顔で。
雪女の息子

総文字数/52,934

ファンタジー73ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
自然に囲まれた町 人と自然が共存し、共生し、 ともに発展してゆく都市。 『阿弥樫町(アヤカシチョウ)』と、 呼ばれる町。 昼は人でにぎわって、 そして夜は――…… 「夜は俺たちの領分さ」 人ならざるものが動き出す。 自然と人が共生する町。 人と妖怪が共存する町。 今夜もまた、闇にまぎれて 禍々しきものがうごめいている ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 完結でございます! ここまでこれたのは皆様の おかげです! ◆◆◆◆◆◆ レビュー感謝です! パペットさん ~♪~ 藤弥さん 奏楽♪さん くまがわなおたかさん 蒼猫さん 遊栄さん パペットさん 感想 ありがとうございます!

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop