Reality~切ない恋の唄~
「その人は、私を…
歌手として…」

感情が先走って、
言葉につまってしまう。



こんな形じゃなくて…

直接、先生の顔を見て
感謝の気持ちを伝えたかった。



一度も伝えることはできなかったけど、
龍二先生には本当に感謝してるから。

龍二先生がいなかったら、
今の私もいないんだ。



また涙が零れそうになる。

私を励ますように、
客席からは拍手が起こった。



しばらく、
うつむいたまま目を閉じた。

呼吸を整えると、
もう一度マイクに向かう。



「もう会えなくなっても…
その人に教えられたことは絶対に忘れません。」

声が微かに震えている。



でも…

今日は絶対に泣いたりしない。
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