“スキ”を10文字以内で答えよ



***



「2年5組、星野葵です……」




私と彼女しか居ない、5時間目の保健室。



あの後私は、叩かれたところを冷やそうと、保健室に行った。

彼女は付き添いで来たようだが。




同い年でこんな美少女が居たんだ、なんて違う事を考えながら、私は右頬に氷を当てる。



「私、才木知紘くんの幼馴染なんです」




でしょうね。

あの口調と才木くんの呼び方で分かる。




「一昨日、知紘の部屋に行った時、本を見つけたんです」




本………?



「知紘に、『これ読んだの?』って訊いたら、『読んでない』って言われて。
でも、気になってちょっとだけ読んでしまったんですけど……、その本……えっと……」

「官能小説だったとか?」

「え、えええ?!何で奈神さんが知ってるんですか?!!」




やっぱり。

それ、私が書いたんですよ。


なんて、口が裂けても言えやしないけど。




「その、小説どうしたの?って訊いたら、『ちょっとね』としか言わなくて……。
知紘の会話に、最近よく出てくるのが奈神さんだから、もしかしてと思って」




勘違いも甚だしい。

それより、才木くんが私を話題に出すなんて。



意外だ。




「あの、本当にごめんなさい!!」




真正面から腰を90度に曲げ、私に謝ってくる。


彼女から謝ってきた事だし、そろそろ私も折ろう。



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