“スキ”を10文字以内で答えよ
放課後。
「乗れよ」
先生の車に乗せてもらって、会社まで行く。
最近、学校帰りは先生の車に乗せてもらうのが、多くなってきた。
こんな所を誰かに見られたら、ヤバイんじゃないかと思うけれど、先生はそんなに気にしていないらしい。
車の方が楽だし、せっかくだからその言葉に甘えている。
慣れた手つきでシートベルトを締め、鞄を下に置く。
「その怪我、どうしたんだよ」
「階段で転びました」
じっと私の右頬を見ると、案の定、この怪我に触れてきた。
助手席で窓の方ばかり見つめながら、早口で言う。
余計な事を言って、面倒な事になるのは嫌だからだ。
「普通顔から転ぶ訳ねーだろ?」
「普通じゃないからこうなったんです」
「普通じゃない」。
自分で言った通り、私は普通じゃないのだ。
家庭環境も、考え方も、今の生活も。
小さなピースでも欠けてしまうと、私自身が、崩れてしまうのだ。