“スキ”を10文字以内で答えよ
希里はいつもの事だからね、とだけ言うと、親切にもう一度最初から順を追って話してくれた。
いつもキャアキャアと喧しい希里だけど、彼女はこんな私に対して、適度な距離で話してくれる。
それが心地良いから、こうやって私が彼女の話を上の空で聞いていても、また話してくれる。
「今日美術の授業あるでしょ?彫刻刀ちゃんと持ってきてる?」
「あ……忘れてた」
徹夜した日に限って、忘れ物をしてしまった。
いつもなら、忘れ物なんてあまりしないのに。
気が緩んでいるのだろうか。
口をポカンと開けたままの私に、「じゃあ貸してあげる!」と言い、その代わりに課題の答えを教える事になった。
これぐらいなら安いものだ。
「それとね!昨日本屋さんに行ったら面白い本見つけたの!あとで見せるね!!」
隣でニコニコ笑っている希里を見ると、彼女に嫌われたくないと、切実に思ってしまう。
だからこそ、私は彼女の前では自然に振舞おうと努力するのだ。