恋心
「ごめんね、何か」
「ううん、大丈夫」
目の前で交わされる会話。
そしてナミちゃんが教室を出ていくと、あたしは春ちゃんに後ろから声をかけた。
「もう、ビックリしたじゃーん」
「だと思った、夏美絶対変な想像したでしょ」
春ちゃんが振り返りながらそう言うと、目が合ったあたし達はクスッと笑い合った。
「まぁね…。っていうか、チェーンはちゃんと直ったの?」
「うん、直った!本当に自転車屋かと思うくらい手際良かったよ」
「そうなんだ…」
言いながら、何だかしっくりこない部分があった。
あいつ、そんなに親切なの?
あいつが?
「何かさ、悪い奴じゃないっぽいよ、清原くん」
えっ?
「多分根はいい奴なんじゃないかな?ほら、前に夏美も言ってたじゃん、男の子に声かけてあげてた話」
「あ…うん」
「それに今日もさ、私が携帯ショップの前で外れたチェーンを見ながらどうしようかって思ってたら、頼んでもいないのに止まってくれて」
「うん…」
「手汚しながら、直してくれたんだよ?」
「ふーん…」
「そんなに悪い奴じゃなくない?」
春ちゃんはそう言ってきたけど。
その言葉に、納得したくない自分がいた。
そうかもしれないよ?
悪い奴じゃない、ちょっといいとこもあるのかもしれない。
でもさ。