恋心



「おい、セナ!歩夢知らね?」


「えっ?いないの?」



その時ーーー


聞こえてきた声に、思わず視線が動いた。

教室の前の入り口。

そこに立っていたのはあの清原で。



「じゃあいいや」


三浦さんにそう言った清原と、何故かふと目と目が合った。


だけど思わずサッと逸らした視線。

もう一度そこに視線を戻すと、もうあいつの姿はなかった。



最近、こういうことが多い。


廊下ですれ違う時。

教室をのぞく時。

下校途中に会った時。


何故だかふと、視線がぶつかる。


清原大雅とは特別言葉を交わすことはなかったけど、そういうことが続くと、変に意識をするようになった。


先輩のことで頭はいっぱいだったけど、あの罪悪感からなのか…あたしはあいつのことを気にするようになっていたのかもしれない。


何も知らないで育ちが悪いとか、あんなことを言ってしまったから。

だから、きっとあたしは気にしてしまってるんだ。


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