恋心



きっと、清原はずっと我慢してきたんだよね。


7歳だったんでしょ?


あのお母さんが出て行ったのは。



それからずっと、頑張ってきたんだよね。



「別に泣いてもいいんだよ?泣きたい時は泣くの」


「は?別に俺は…泣くことなんてねーし」



耳元から響く声。

強がりの向こう側。

それが今は分かるような気がする。



「いいじゃん泣いても。でね、また笑うの。いっぱい泣いたらいっぱい笑うの」


「……何だよそれ」



鼻水をすする音がして。

清原の涙が、あたしの首筋にこぼれた。



「大丈夫、誰にも言わないから」


「…はぁ?…何のことだよ」


「へへっ、清原大雅にも涙が出るんだってこと」


「涙なんて出てないっつーの」


「はいはい」


「泣くわけねーだろ、俺が」



ふふっと笑みがこぼれる。


清原の言葉ひとつひとつが可愛いと感じた。



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