未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*

*ギュッの真相


鼻と鼻がくっつきそうになるくらいまでは、目を開けていた。

その時の辻之内は、見たことのない顔をしてた。ちょっと怒ってるみたいにも見える、真面目な表情。

伏し目がちで、少しだけ開いた唇はかなり色っぽくて。どんどん近づいてくる彼と目を合わせていられなくて ――

というより、とっても自然な流れであたしは、そっと瞼を閉じたんだ。




だから、


「え……。時、田?」


なんて戸惑いの声がした時は、こっちの方がビックリで。

ギュっとかたく閉じた瞼をそっと開けると──

……こういうの、たぶん拍子抜けって言うんだよね。


さっきまでの恍惚とした彼はどこへ行ったの?

あたしのことをなんでいるの?って目で凝視して、驚きを隠しきれないって感じの表情で、おまけに近づき過ぎた体を仰け反らせていたんだ。

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