未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*

「どうして?」と顔をのぞきこまれる。


「もしかして怖い?」

「……う、うん」


はい、正直いって怖いです。
気持ちよさそうなんて言っておいてなんだけど。


「それじゃあ……あれは?」


辻之内の細長い指が空を指す。

赤を基調とした鮮やかな配色の丸い影──それは、熱気球。

ここから眺めているだけならいいけど、あそこに自分が乗っていたら──なんて想像しただけで寒気が走った。


「気球かー。ちょっとね……」


すると辻之内は、うーんって困り顔をしてから言った。

「時田、俺ちょっとヘコんでいい?」

< 155 / 406 >

この作品をシェア

pagetop