未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*
「でもね、それだったらやり方が違うんじゃない?
あたしは封筒をあちこちに落としてきたけど、本物の実験は──」
「本物の実験は一ヶ所で行なった。一定の時間の中で近くを通った人が、どのくらいの割合でポストに投函してくれるか」
「どうして変えたの?」
「だって一時間も同じ場所で見張ってられる?」
「それはー……確かにこの暑さだしダルいかも」
「でしょ?」
でしょ? って、辻之内、案外適当なのね。
「じゃあ、ここが田舎の例としてもう一ヶ所、もっと人口密度の高い場所でも実験やるの?」
尋ねると彼は、ストローで琥珀色の液体をクルクルとかき回しながら言った。
「それは後日考える」
やっぱり結構適当だなぁー。
『研究発表なんだから、実験の1つでもやったほうがいい』
前にそんなこと言われて、なるほどそうかもってちょっとは思ったけど、そんなマジメなわけじゃないんだ。