未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*
「どこでもよかったんだ」
「え?」
「場所なんてどこだってよかった。
研究発表のせいにして、時田とどこかへ来たかっただけだよ」
「──……」
な、な、なんて言ったのいま……?
ねー、すっごいこと言わなかった?
言ったよねー、いま。
またからかわれたのかな……。
でも、からかわれたんじゃなかったら、じゃなかったとしたら──
やだっ! あたしってば耳まで赤いかも。真っ赤かもっ!
なんて言葉を返したらいいか、どんな顔を向けたらいいか
どっちもわからなくて、下を向いてスカートのひだをキュッと掴んだ。
……だけど──
「時田?」
そっと顔を上げて見た辻之内はいつもの彼で、何事もなかったような涼しい顔で言葉を続けた。