未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*
「う、うん」
辻之内のシャツを指先でつまんだ。
「そんなんじゃ落ちちゃうよ?」
わかってるよ。
言われなくてもよーく、わかってはいるけどね……。
「とーきた?」
「…う、ん」
急かされて、両手で腰の辺りを掴んだ。
そしたら、胸ん中がキュキュッて狭まって──
なんなんだろ……この感じ。
「ったく、こんな掴まり方じゃ振り落としちゃうぞ」
そう言って、あたしの両手首を掴んだ辻之内。
そしてそのまま自分の腰へしっかりとまわした。
「キャッ!」
腕を引かれてた勢いで、頬が辻之内の背中にペッタリと貼りついた。
ウソでしょっっ。
思考回路が、心臓が止まりそー!!
「このぐらいしないとね。
それじゃ、しゅっぱーつ!」
かけ声と共に走り出した自転車が風を切った。