未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*
歩道橋の階段を数段駆け上がったところで、つまづいた。


「痛っ」


咄嗟にさすった手を離すと、擦り剥けた膝から血が滲んでいて。

鼻の奥がツーンとしそうになって、慌てて空を見た。


やだな、もう。

なにやってんのよ……。



手すりに頬杖をついて、見下ろした車の群れ。

交差し遠のいてゆくヘッドライト。


あと少しで沈んでしまう夕陽に、さっき見た彼女の顔が重なった。



屈託のない、あの笑顔を辻之内はずっと想ってきたの?


愛しくて、ずっと大切にしてきたの?



「はぁー」


ため息を溢して、なんとなく移動させた視界の隅にチカチカと点滅する光。


「……?」



見上げると、ビルの壁に施されたイルミネーション ――
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