未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*
*失恋ソング
「湊、本当はあまり乗り気じゃなかったんじゃない?」
隣を歩くリカが心配そうに尋ねてきた。
「ううん。そんなことないって」
「そーお? 最近の湊、ずっと浮かないみたいだったから、カラオケなんて気分じゃなかったんじゃないかって」
「えっ あたし、そんな暗い顔してた? なんにもないし大丈夫だから。
リカこそ、そんな顔しないでちゃんと楽しんでよ? 」
「うーん。なんか湊のその笑顔、カラ元気に見えるのはあたしだけかなぁ?」
ちょっとマユ毛を下げ気味にした顔を向けられた時。
「はい、とーちゃくー。
この中の3階だから」
前を歩いていたナカジーが立ち止まり、振り返りもせずに雑居ビルの中へ入っていく。
それに続くあたし達。
狭く急な階段の一段目につま先を乗せた時
「暗いから気をつけて?」
林田くんが振り向いた。
トレードマークのようなツンツンヘアの下で、たれ気味の目が三日月型になる。
「あっ ありがと」
返事をするとさらに笑いかけられて。
その頭上では、先に上がっていったナカジーの靴音が響いている。