未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*

*天使の微笑み





「ここだよ」


歩道橋を上ったところで、辻之内が言った。


そして彼が指したのは、近くに建つビルの壁。


でも何もない壁を見つめて

「おかしいなー」

って彼が首を傾げる。



「どうしたの?」


「ここにイルミネーションが設置されてるんだけどね」


と困り顔をしてて。


「それって天使の…?」


ってあたしの問いかけにぱっと表情が変わった。


「時田、知ってるの?」


「うん。でもまだ明るいから点灯しないんじゃないかな」


「でも前は、昼間でも点いていたんだ」


「そうなんだ……あの天使がどうかしたの?」


イルミネーションが点灯してなかったってだけで、ガッカリ顔の辻之内に尋ねる。

すると彼はゆっくりと瞬きをしてから、教えてくれた。


「ここは、時田を最初に見た場所。

俺が時田 湊にひとめ惚れをした場所だから」

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