未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*
ひとめ惚れ ――?



彼は照れながら、そっと打ち明けてくれた。



それは去年の3月。

その日は公立高校の受験日だった。


辻之内は筆記試験を受けるため、F高へ向かっていた。


国道を挟んで向かい側にある停留所からバスに乗るため、歩道橋を渡ろうと階段を上りきったところで見たと言った。


それは、白いローブを着て背中に金色の翼の生えた天使 ――

そう見えたって。


こっちに向かって走ってくる姿。

すれ違う時、天使じゃないってわかったらしいんだけど。


壁に施された電飾の翼が重なって、背中から生えてるように見えただけだって。

わかったのに……


彼は、辻之内は

歩道橋を渡るのを止めて来た道を戻った。



あたしの志望校を確認したあと。


F高には行かずに後日、うちの高校の2次募を受けた

という話 ――
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