未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*
考え込むような顔をしてる辻之内に触れられて、あたしは身動き一つ出来ずにいた。
「おいおい葵、さっきから湊ちゃんに触りまくって何やってんだよ!?」
あきれたように尋ねる吉井の声も耳に届いているのに、あたしは固まったままで。
かく言う辻之内はというと
「だってまた赤くなってるからさ」
と真面目な顔で返してから
「でも、見た目より熱はないかな」
って今度は、両掌であたしの頬を包み込んだ。
「ほんの微熱程度みたいだね。でも時田、大丈夫?」
顔をのぞかれながらの問いかけに添えられたのは、ふわふわな微笑み。
……ますます動けなくなる。
辻之内の手が離れてしまっても、それでもあたしの身体は固まったままだった。