未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*
「苦手なの」
「ん?」
小さく呟いてチラリと目線を上げると、不思議そうにあたしの顔をのぞきこむパッチリな瞳と視線がぶつかった。
「ほら、理数系が苦手だとか暗記教科がダメ!とかってあるでしょ? あたしは、作文とかそういうまとめて書くっていう作業がものすごく苦手で、小学校の時から全っ然出来ないの」
こんなこと言っても、へぇ~そうなんだーくらいの反応だろう。
それに、辻之内みたいにどの教科もそれなりに出来ちゃうような人にはわかるまい。そんな風に思ったら、たった今打ち明けたことを後悔した。
でも、辻之内の口から出てきたのは意外な言葉で。
「手伝おっか?」
「え」
「レポート書くの良かったら手伝うよ。時田には昨日、一緒に残ってもらったし」
「でも特別授業のノートなんてとってないし」
「ノートなんていらないよ」
「だって授業があったのって先月だよ。辻之内、覚えてるっていうの?」
身を乗りだして尋ねると、うーん……と一旦言葉を切って、
「大丈夫。ここに入ってるから」
と彼は、自分の頭を人指し指でトントンと示した。
そしてそこには、とびっきりの王子様スマイルが添えられていた。