未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*
「辻之内! お前は今何時だと思ってんだっ?」
「えっと、8時ぃ……」
なんて、黒板の上に掛けられた時計に目をやる。
「そうじゃなくてっ、お前は始業式もサボリやがってー」
って早口で言い返すキジモン。
でもでもその言い方、ちょっと緩くない?
なんだか “怒る” っていうより “呆れてる” って感じで、さっきあたしの名前を叫んだ時より確実に緩いって思った。
「っていうか先生、始業式っていつだったの?」
「はあ? 昨日に決まってるだろうが」
「え。そうなの?」
「……そうなの? ってお前なー」
とことん呆れたキジモンの表情が緩んでいく。
「だって先生、尚太が教えてくれなかったよ」
そんな辻之内の発言の直後、あたしの左隣の男子が立ちあがった。
「葵っ、 テメッ人のせいにしてんじゃねーよっ!」
って言葉は悪いけど顔は笑ってる。
彼の名は、吉井 尚太(よしい・なおた)。
学年の中でも目立つ存在の一人で、一年の時は王子と同じクラスだった。
大抵、二人はいつも一緒に行動している……らしい?