未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*
「だって尚太、そういう大事なことは教えてくれなきゃ?」
教壇の横でニコっと微笑んだ辻之内 葵に、吉井 尚太が勢いよく返した。
「なにが小首傾げて『教えてくれなきゃ?』だよ?
ったくっ、 お前は俺の彼女か!?」
そんな二人のやり取りに笑いが起こった。
そこへキジモンが割って入る。
「あ゛あーっ!
もうお前等いいから、辻之内も早く席に着け」
「はーい」と 声を揃える二人。
「あれ? どこまでいってたかな……?」
とボールペンの柄で頭を掻くキジモン。
そんな光景をボーっと眺めながらあたしは思った。
ほら、やっぱり。
怒り方が緩いなーっていうか甘いよ? 絶対。
いくら王子が美少年だからって、キジモンなんてオッサンのくせに。
なんで、えこひいき?
まさかキジモンってそっちの気アリ?
なんかちょっと納得いかない、かも。
「………」
あれ、でも。
さっき説教されかけてたあたしって、王子の登場のおかげでもしかして助かった?
……かも、しれない……。