未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*

「辻之内ってピザ好きなんだ?」

「めちゃくちゃ好き」


なんて、本当に嬉しそうな笑顔しちゃって。

いつもはクールな感じなのに、このギャップがなんていうか結構可愛いかも。

こうしてふーふー言いながら一緒に食べてると、さっきまでのちょっぴり張り詰めてた気持ちもいつの間にかすっかり崩れちゃってる。心臓がドキドキしてたのも、どこかへ飛んでちゃったみたい。


あーあ、口のまわりにソースがいっぱいついてるよ。
もう、子供じゃないんだから。

“王子様”なんて言われてるけど、辻之内だって普通の男じゃん。


「辻之内、ここ付いてるよ?」

「ん?」


あたしは無意識のうちに傍にあったナプキンを手に取り、彼の口もとへ手を伸ばしていた。

でも、届く前にはっとして手を止めたんだ。


「時田、どうしたの?」

「………」


ドキドキは消えてなかった。どこへも飛んでいってなんてなかった。

急に意識したら、辻之内に触れるなんて恥ずかしくてそんなこと出来なくて。

でも、どうしよう。
伸ばしたままのこの手、引っ込められないよ……。

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