未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*
Chapter4

*言ってあげない




次の日の朝のこと。


「おはよ」


学校近くの停留所。たった今バスから降りてきたリカに声を掛けた。


「おはよー。ねぇ、もう大丈夫なの?」

「………?
 大丈夫って、なにが?」


聞き返すと一瞬、時が止まったリカ。そしてすかさず言った。


「具合だよ、具合! もういいの?」

「………(あ。)」


そうだった!昨日あたしが早退したのは、具合が悪いってことになってたんだ。


「う、うん。もうすっかり良くなったよ」


作り笑いってのは得意じゃないけど、即席で張り付けて見せた。


「なら良かった。そういえば昨日帰る時、玄関で王子と一緒にならなかった?」


ほっとしたのも束の間、その一言に立ち止まる。


「ど、どうして?」

「王子も三時間目が始まる前に帰ったんだよね。教室を出て行ったのって湊が鞄を取りに来る直前だったから」


手に持った鞄をぶんぶん振りながら、あたしの少し前を行くリカ。


「そうなんだー、ふーん……見かけなかったなぁ~」


あたしは嘘をつくのがかなり下手だと思う。でもリカっだって勘が鋭いほうではないらしい。

今日ばかりはそんな友に感謝した。

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