未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*
教室に入り鞄の中身を出していると、
「湊はどう思う? やっぱりナカジーと1組の佐野さんってあやしいかな?」
あたしの机の傍らに立ち、早速“ナカジー話”を始めたリカ。
「うーん。どうかな」
あたしは、友達の話を適当に聞いて適当に受け流すタチではない。でも、正直いって中島のことをよく知らない。知っているのは、テニス部でリカの好きな人であるということぐらい。
その時。
「中島って、あのインテリ臭プンプンな男のこと?」
机の上にドサッと鞄を放り投げるように置きながら、吉井が言った。
吉井 尚太が登校してきたってことは──
右方向に首を向けようとしたら、それより早くあたしの目の前に飛び出して来た小さな物体。
「おはよ。はい、忘れ物」
その声は昨日たっぷりとあたしの耳に染み込んだ、ちょっと(ううんホントはかなり)いい声。
……忘れ物?
でも近すぎて、それが何なのかよく見えない。