未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*
そのあたしの返事に目を通した辻之内は、ペンを握ったまま黙りこんでいる。
………そうだよね。あんなにいっぱい説明してもらったのにね。
昨日、辻之内家を出たのは夕方の5時を回ってからだった。
2時間目の終了後に早退して、それからずっとマンツーマンで教えてくれたのに………なのにレポートができてない、なんてあきれられたかな?
ジミーこと味地(あじち)先生の、カツカツと黒板にチョークを滑らせる音が響いている。
板書された英文を眺めてたら、つんって辻之内がペンでまたつついてきた。
そして、のぞきこんだノートの左端にはこう書いてあった。
“今日って あいてる?”
え。今日──?
それって、どういう意味?
右を向いて首を傾げるとそんなあたしに辻之内は、さっきのとこにささっと書き足して、そこを指で“読め”のポーズを示した。