これが僕らの愛のかたち 【短編】
新幹線改札に近い側のエスカレーターを降りると、

西口の自動ドアの向こうにアマガエルみたいな色をした軽自動車が止まっていた。




助手席の窓が開いて、

「いらっしゃい」

と彼女は僕に手を振った。



彼女から軽自動車の写真つきメールが送られてきたのは二週間前のことだ。


そのメールには

『車、やっと納車しました。
英葉と書いてひでふさ君です。
よろしくね』

という言葉が添えられていた。




彼女の持ち物には、大概名前がついている。

「そのほうが愛着がわくでしょう?」

というのが彼女の談。


小さいころ大好きだったクマのぬいぐるみにはじまり、
携帯電話、
パソコン
と彼女の話に登場する品物には大抵名前がついている。


高校生のとき、通学に使っていた自転車が盗まれたときも、彼女は名前を呼びながら探したのだそうだ。


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