いつかの花。
マヌケな顔だったんだろう。
イケスカない男が、ムッと眉をしかめていた。
「道を教えてやろう。要らぬのか?」
「い、いりますいります! お願いします!」
「どこまでだ?」
「……小野真人様のお屋敷まで」
これこそ天の助け!!
この人、意外に『イイ人』だったりする?
けれど、彼は『小野真人様のお屋敷』と聞いて、わずかに顔をこわばらせたようだった。
……なんで?
「乗れ」
「と、言われても……」
手を差し伸べられ、馬に相乗りするように促される。
けれど、どうやったらいいのかわからない!
現代人にそんなことを求めないでほしいのにっ!
「……仕方ない」
そう言うが早いか、『多分イイ人』は、強引に私の腕を掴んで――。