始まりと終わりの間
待ち合わせした駅の近くに車を止めてもらった。

「今日はありがとう。ご馳走様でした」

「待てよ…家まで送るよ」

茶髪にピアス、アクセサリーをジャラジャラ着けた男が引き留めた。

「ここでいいの。じゃぁまたね…」

車を降りようとすると腕を掴まれた。

「何するのよ!離してよッ!」

相手の男を睨み付け、その手を振り払った。

「家まで送るって言ってるじゃん、なぁ…」

『家まで』なんて言うけど、そこじゃないのは読めてる。

それにアンタとは、今日が初対面。

食事で終わりってパターン考えないのかよ…

だいたい…
アタシはチャラい男は嫌いだ。

送らせろだって?
誰がその手に乗るか!

「これから約束があるの」

「何の約束だよ?」

「彼氏とデート」

「ハァ?見え透いた嘘つくなよ」

それじゃ、ハッキリ言ってもいいのかよ?
『ウザイ!』って!

「アタシねぇ、しつこい男は嫌いなの」

サッと車を降り、走って横断歩道を渡る。

大きな声で文句を言ってるが、全く聞こえない。

駅に向かって歩いていると、クラクションが鳴った。


「よぉ!今帰るなら乗せてくよ」

幼馴染みの隆也だった。

「なんでココにいるの?」

アタシの質問にニヤニヤしながら
「デートの帰り」
と答えた。

隆也は、そんなにイケメンじゃない。
特に金持ちでも、頭がいい訳でもないのに、なぜか女のコにモテる。

「隣に座れよ」

と、助手席のドアを開けた。

「デートって事は彼女が出来たんでしょ?」

「出来ねぇよ。いたら、こんな時間に一人なわけ無いじゃん」

そっかぁ
笑いながら助手席に乗った。

「梓こそ、どこに行ってたんだ?こっちは住んでる方向じゃねぇだろ?」

聞こえないフリをしながらタバコに火を点けた。

「それに、さっきの男は?」

フーッと煙を吐き出して「知らないなぁ」と言った。

隆也が辺りをキョロキョロしている。さっき梓と別れたチャラ男が、こっちを見ていた。

「どうするんだよ?」

「どーもこーもないわ。別に関係ないし」

「ハハッ!お前らしいな」

笑いながら、隆也もタバコを吸い出した。
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