始まりと終わりの間
雨上がりだから、少し波はあるけど、空には綺麗な月が出ている。

夜の浜風は少し冷たい。

上着を持ってきたら良かったな…

ん?違うよ!

一人で出掛ける所だったのに、隆也に強引に連れられたんだから、上着とか用意してるはずないじゃん。

「隆也、寒いから戻っていい?」

「あ、寒い?それじゃ…」

と言ってアタシの肩に手を回した。

「は?何すんのよ」

隆也の手を振り払うと、今度はアタシの後ろに座って、ギュッと抱き締めてきた。

「な…ッ?!」

「いいじゃん。寒いんだろ?」

「車に戻ればいいじゃん!っていうか、もう帰るから…」

抱き締める隆也の腕が離れない。

やめてよ…
苦しくなるよ…

隆也、アンタはズルい…

どんな気持ちでピアスを捨てたか知らないでしょ?

隆也を諦めるために、泣いた事だって知らないでしょ?

アンタは彼女がいるんだから、彼女に優しくしたらいい。

抱き締める相手は、アタシじゃないんだから…

「…とにかく戻る」

「梓…どうして離れようとするんだよ?」

答えられなかった。
本当の事なんて言えないよ。

隆也を諦めたのに…

"このまま抱き締めて欲しい"

だなんて…

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