始まりと終わりの間
13
隆也の鼓動が背中を通じてアタシに伝わる。
本当は嬉しいのに切ない時間…

「隆也…離して…」

「やだ」

「お願いだから離して…」

もう限界だった。
アタシは隆也を諦めきれてなかったんだ。
涙が溢れそうになるのをこらえた。

「やだ。このままがいい」

「隆也…抱き締める相手が違うよ、アタシじゃないでしょ」

「梓でいいの」

やめてよ…
人の気持ちを弄ぶのは…

「もう!寒いから戻るッ!離せよ!バカ隆也ッ!」

腕が離れ、アタシは車の方に歩き出した。

「何だよ!やっぱり可愛くねぇなぁ!」

可愛くなくて結構。
隆也には関係ない。

振り返ると、隆也はまだ階段に座ったままだった。

寒いって言ってるのに、何でよッ?!
風邪引いたら隆也のせいだ!

「隆也ッ!」

聞こえてるはずなのに返事もない。
イライラしながら迎えに行った。

「隆也、寒いから帰るよ」

「梓…そんなに俺の事キライ?」

何言い出すの?
好きも嫌いも関係ないじゃん。
彼女がいる人の台詞じゃないでしょ?

「梓…どっち?」

はぁ?
何?その女みたいな台詞は?

だいたい、アタシは何て答えたらいい?

正直に言っても、嘘を言っても、アタシが悲しい気持ちになる事に変わりないんだよ…
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