愛し方も知らず僕等は


スタッフルームから出てきた宮城は、何やら小さな紙を持っていた。【注文用紙】というものではなかった。チラシか、何かの紙の端を破ったみたいな紙だった。そして宮城は「お待たせしました」と言ってCDを袋に入れ、その紙と一緒にあたしに渡した。

「お待たせいたしました」

あたしはこの紙がなんなのか気になったが、あえて聞かなかった。
聞いても宮城が答えてくれる気がしなかった。

あたしは何も言わずに店から出ようとした。いつもは歩くのが遅いあたしが、何故か少し早めに歩いた。ここにいるのが、つらく感じたから。「もうこの人とは会えないかも」という言葉が頭をよぎったから。

「お客様」

いくら早めに歩いても宮城の声にはすぐ反応して、後ろを振り返ってしまった。
もちろん宮城の眸はさっきと同じで切ないままだった。むしろさっきより切なさが増している気がした。
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