空の竜〜リュウに選ばれし者たち〜
「え〜?でも普通に歩いてたし…」
「その時、純は、なにしてた?」
「夕日見てただけだよ」
泣きそうになったことをうっかり言わないように答えた。
「どんな気持ちで、見てた?」
「え、“きれぃ”だなあ?」
ほんとはそれだけじゃなかったから、ごまかすように答えた。
「竜はな、山に住んどる。山の気持ちになったとき、竜はあらわれるんやで」
「山の、気持ち……?山に気持ちはないでしょ?」
わたしは、おばあちゃんの言ったことを素直に考えて言った。
「あほう。ちゃんと、山にも気持ちはある。明日、じっくり、山の中みてきぃ」
おばあちゃんは、そう言うと始まったテレビの時代劇を楽しみはじめた。