《短編》猫とチョコ
お祭り
『―――ヒナ!!
こっちだよー!!』


“着いた”とメールを送ると、どこからかサクラの声がして。


周りをキョロキョロと見回した。



「サクラー!!」


サクラを発見し、あたしは声を上げて駆け寄っていく。


いつもはそんなに人の居ない駅なはずなのに、さっきからぶつかってばかり。



「めちゃくちゃ可愛いよ、サクラ!」


『ホント?!
ヒナも、めちゃめちゃ可愛い!!』



大丈夫。


あたしはちゃんと出来てるじゃん。


今日の役目は、サクラと春本くんをくっつけること。


それに徹すれば良いだけのこと。


電車の中で繰り返した言葉を胸に秘め、あたしは無理やり笑顔を作った。


お祭り気分に飲み込まれてしまえば、何も考えずに済むから。




『遅くなってごめんなぁ!』


しばらくして、春本くんとみぃの登場。


私服の彼らなんて、初めて見た。


相変わらず爽やかな春本くんと、相変わらず眠そうなみぃ。


学校では毎日のように顔を合わせていたけど、今日は何だか新鮮だった。


と言うより、隣の二人は照れたような顔してるけど。



「混むし、早く行こうよ!」


見たくなくてあたしは、声を上げた。


ラブラブな姿が、今は痛い。


サクラは浴衣姿で、一層輝いて見えるのに。


あたしは、一体何だろう。


ホントは全然楽しくなんてなかったけど、みんなとの話しに花を咲かせた。



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