《短編》猫とチョコ
着いた神社は、人の波。


屋台の数に圧倒されながらも、4人で色んなことをした。




『…ヒナ。
そろそろ、俺ら抜けよう。』


段々と夕闇に包まれ始めた頃、みぃが耳打ちしてきた。


折角、何も考えずにはしゃいでいたのに。


抜けた後、あたしは独りで家に帰るのかなぁ。


駅に戻って、本当に彼氏の姿がなかったら…。


そんなことを考えることが怖かった。



『ハル、サクラちゃん!
俺ら、腹減ったら向こうの方行くから!』


『えっ?
わかった!じゃあ後で合流しような!』


何も知らない春本くんは、笑顔で言葉を返した。


その返事を聞き、みぃにつられるようにあたしも、きびすを返して人の波に消える。


こんなに簡単に、あたしの役目も終了なのか。




『全然疑われなかったな、俺ら!(笑)』


そう言ってみぃは、うーんと背伸びをした。



『しっかし、二人とも気合入れすぎ!
まぁヒナ、浴衣可愛いから彼氏クン喜ぶんじゃない?』


「―――ッ!」


みぃの言葉に、あたしの足が止まった。


喜んでくれるはずの彼氏は、ホントはもぉ居ない。


“可愛い”なんて、みぃに言われたってちっとも嬉しくない。



『…ヒナ?』


振り返り、みぃは不思議そうにあたしの名前を呼んだ。



「あっ、ごめん!
ちょっとあたし、人混みで酔ったのかも。」


みぃに振られたことがバレたら、思いっきり馬鹿にされそうで。


思わずあたしは、笑顔を作ってしまう。



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