《短編》猫とチョコ
嫉妬心
したのかしてないのかもわからない、あの日の約束。


具体的なことなんて、お互いに何も切り出さなかった。


何一つあたしは変わりなく、みぃと過ごす日々。


次第に季節は秋の深さを増し、時折風が冷たささえ混じらせる。


いつもフラッと居なくなり、またフラッとあたしのところに戻って来る。


相変わらず猫みたいなみぃ。


そんな日々が変わったのは、いつの日を境にだったろう。




『―――みぃくん!
何やってんの~?』


可愛い顔した女の子が、みぃの周りをうろつき始めた。


もちろんあたしは彼女なんかじゃないから、自然とみぃとの距離をとる。


ツンとした態度のみぃに、それでも女の子はその腕に自分の腕を絡ませた。


その度にあたしは、気付いたら顔を背けてる。


ただ、見たくなかったから。


みぃの左隣には、いつもあたしが居たはずなのに。


そう思う自分と、彼女でもないのにそんな風に思ってしまう自分に対する苛立ち。


嫉妬だなんて、認めたくなかった。



『今、誰も付き合ってないんでしょ?
だったら良いじゃん!
あたしと付き合ってってば!!』


『ははっ、その気になったらね。』


みぃはいつも、笑って返す。


影で“疲れる”とこぼしながらも、決してその顔を崩そうとはしないのだ。


だから余計に、苛立ちが抑えられない。


その女に対しても、みぃに対しても。


結局のところ、どれがみぃの本心かなんてわからないから。


犬と違って、従順じゃない。


一体誰になついているのか。


あたしは飼い主なんかじゃないし、みぃは本物の猫でもないのに。


こんな独占欲ばかり、顔を出すんだ。



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