《短編》猫とチョコ
“ちょっと来てよ!”


そうあたしを呼び出したのは、その女と友達らしき女。


理由なんて聞かなくても、大体の見当はつくけど。



『…ねぇ、小柳さん。
わかってるわよね?』


『あたし、みぃくんのこと好きなの。
だから、邪魔しないで欲しいんだけど。』


腕を組んだ二人組みが、威圧的な態度であたしを睨む。


あたしは邪魔なんかしてないし、誰がみぃを好きだろうと関係ない。



「…あたしは、みぃの友達だから…」



“友達”


お互いに、それ以上でも以下でもない。


なのに言ってて悲しくなってくるのはきっと、

あたしがみぃのことを好きだからなのかもしれない。


それでもあたしには、強く言えるほどの勇気は持ち合わせては居なかった。



『好きじゃないってことだよね?』


その言葉に、コクリと頷いた。


自分で塗り固める嘘が痛い。


顔を上げることも出来ないまま、あたしは唇を噛み締めた。


視界の端に映るのは、鼻で笑ったように顔を見合わせた女二人。


負けてないと、信じたかった。


みぃは必ず、あたしのところに帰ってくるから。


いつも近寄ってくる女達に、嫌そうにしてたから。



『―――ヒナ発見!
居なくなるからビビったー!!』


そう言いながら、みぃが近づいてきた。


驚くあたしと同じように女達は焦り、

逃げるように“わかったね?”と言葉を残して去った。



『次の数学当てられるから、答え教えてくれる約束じゃん!』



何だ、そーゆーことか。


助けに来てくれたのかと思って、少しだけ期待してしまった自分が馬鹿みたいだった。


< 42 / 65 >

この作品をシェア

pagetop