初彼=偽彼氏


「……オレに彼女が出来たってことになれば、少しは言い寄ってくるのが減ると思った。……それに元々オレのことを全く知らないヤツがいるって聞いてたし。まぁそれが姫季だったんだけどさ…。オレのことがわからないヤツがオレに恋愛感情なんて持つわけないだろうし…多少は公私割り切った付き合いが出来るかなっていう安易な理由で姫季を選んだのが一番の理由」


「………、」


「――変なこと言って悪かった……。姫季が嫌だったら断って良いから。こんなこと言うヤツと関わりたくないだろ?」


「そんなこと……」


 ない、とは言えなかった。


「……突然こんなこと言ったし戸惑うのが普通だと思う。ただ、とりあえず2日だけでも良いから……、考えてもらっても良い?――…っとこれ、オレの連絡先。先に渡しとく。直接答えを言うのが嫌だったら、こっちに連絡してくれても良いから」


 神藤くんから手渡されたのは、携帯の電話番号とメールアドレスが書いてあるメモ用紙。


「――…っどうして」


「どうしてここまでするのか……って、ただオレは平穏な日々を送りたいだけ。でもまぁ…オレと付き合うフリをしたら姫季の今までの平穏な日々を奪っちゃうことになるけど――」


< 53 / 59 >

この作品をシェア

pagetop