男装人生

庭園の隅にはベンチが置いてあり、花々を鑑賞するために最適な位置だと玲李は1人感心していた。


大分疲れてきたとこだしベンチに座り、一休みすることにする。

東から照らされる日の光がちょうどいいところに大きな木に当たり、木陰を作ってくれている。


静かだけれど、確かに息づく生き物たちの気配。

朝独特の澄み切った空気。


調査の為、気を張っていたのだが穏やかなこの場所に気持ちが楽になったのを感じる。


そっと目を閉じ、考えた。



お父様はどんな情報を持っていけば認めてくれるだろうか・・・



きっと、明李(メイリ)なら、簡単に期待に応えてしまうんだろうな・・・


玲李よりも小柄で長い艶やかな黒髪。
身近にいた姿を苦々しい気持ちで思い浮かべる。

私と違って、芯の強いお嬢様だった。
ピンと伸ばした背筋は、まだ14歳なのに気品が漂っていて。
あの、何もかも見透かしてしまいそうな強い瞳にいつだっていたたまれなくなる。


隣で気づかないふりしてへらへら笑う私は、ちっぽけで恥ずかしい存在に見えてならない。

決定的に何かが違う自分にいつも落胆していた。


姉妹のはずなのに、身体も心も遠くて、物心ついたときから私達の間には見えない壁があった。



それでも昔は仲良くなりたいと心から望んでたのに・・・

いつしか明李よりお父様に認められたい、そればかりだ。


こんな有様だけど・・・



パッと目を開ける。

キラキラと光る花々に、蝶々がひらひらと蜜を求めう舞う、そんな何気ない様子が玲李の気持ちを癒す。

モヤモヤした気分が目の前の光のごとくパァッと晴れた。


そろそろ行かなきゃ。


名残惜しい。


ここはこんなにも居心地がいいが、知りたいことは何も出て来なさそうだ。


早く見つけなければならない。

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