still
「あっ、葵衣!」
突然名前を呼ばれ、びくっと体が跳ねる。
あたしに気付いた司くんが
女の子の手を引いて近付いてきた。
「こいつ、俺の彼女!」
幸せそうな顔でそう告げられた瞬間、
心臓をぎゅっと掴まれたような感覚がした。
「つってもまだ付き合い始めて2週間くらいだけど。
あ、美姫、こいつ俺の1番の女友達」
「よろしくお願いします」
――笑顔も、名前も。
あたしなんかよりずっとずっと女の子らしいその子から
あたしは思わず目をそらしてしまった。
「音弥には言ったんだけど、
そういえば葵衣にはまだだったな。」
「う、うん……」
一生言ってくれなくてよかったのに。
"司くん"て呼べることだけで浮かれてた自分が惨めで、胸が痛くて。
あたしは2人の会話に適当に相づちを打って
涙が出そうになるのを必死でこらえていた。
そんな状態にも限界が来そうになった
――そのとき。
「葵衣!」
二宮の、
声がした。