【企・雪集】真っ白な二人





『あの頃は俺、毎日バイトしてたし。こうしてゆっくり話すこともなかなかなかったよな』


「おじさん、かなりの資産家だったっけ?」


『あ、それ聞いたんだ?』



余計なこと聞いちゃったかな。
家庭のことだし。



『おじさんとおばさんはほんとにいい人だよ。感謝してもしきれねえんだ。

あの時、引き取って貰ってなかったら俺、今頃生きてなかったかもしれない』


「ーーうん」



あたしは頷くしかできなかった。
それ以上何も聞かなかったし、彼ももう何も言わなかった。



彼は一体何を言いたくて、あたしに声をかけたんだろう。

聞きたいけど、聞けない。
聞いたらいけない気がして。





『あのさ、今日から一週間。一週間だけでいいんだけど、一緒に帰らない?』


「はい?」

突然の言葉にびっくりして。
思わず変な声が出た。


えっと、なんでかな?
どうして?

そう思ったけど、それは声になっていなくて。



だけど、あたしは頷いてた。

首は、動いてたの。


ねえ、譲。
本当になにを考えてるの?





< 11 / 27 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop