【企・雪集】真っ白な二人
正しく言えば、貧乏だったからと言うのは間違いかもしれない。
彼の家は両親が離婚していて、彼はお母さんに育てられた。
いわゆる母子家庭だった。
父親は借金を残して母と彼の前から姿を消したらしい。
彼いわく、“最低の父親”。
必死に働いてお金を稼ぐ母親の姿を見ながら、彼もバイトをいくつか掛け持ちをして過ごしてた。
だから当然彼とデートをする時間なんかなくて。
どこか遊びに行く為のお金もなくて。
付き合っていた間にした事はただ、手を繋いで学校に一緒に行き帰りしただけ。
たったそれだけだった。
あとは学校でたまにお昼を一緒に食べたり会った時に話したり。
そんな毎日だった。
だから友達の芳純(カスミ)に、
「そんなので、楽しいの?付き合ってるって思える?」
と言われた時は、笑えなかった。
ただただ、苦笑い。