【企・雪集】真っ白な二人
譲は、別れた後数日経って、引っ越した。
彼の母親は働きすぎて、倒れてた。
もう、限界の所まで働いてたんだって。
搬送先の病院で息を引きとった、と聞いた時はさすがにあたしもパニックになった。
譲のことも心配で。
譲は中学三年生。
卒業も間近だった。
そんな時、母親は彼を残して逝ってしまった。
まだ中学生なのに、なんとか働かせて貰える所を探して交渉して。
少しの稼ぎでもいいからって働いて。
お母さんと一緒に頑張ってた。
辛い顔なんて一つも見せずに。
それなのに、
こんな不幸を神様が彼に与えたのか。
それならば、神様は意地悪だ。
譲がどんな気持ちだったのか。
それは、彼自身しか知らない…
彼は卒業式には出席したものの、春休みには養子として親戚に引き取られてこの街から去った。
風の噂で、その引き取った人がかなりの資産家で、彼の生活は一気に変わったと聞いた。
そして彼が編入してきて、それは本当の事だという事を悟った。
彼はまたこの学校でも持ち前のルックスで人気を集めた。
もうあの頃の彼じゃない。
今はもう全部揃ってる完璧な人だ―――