S・S・S



見上げた漆黒の瞳にあたしが映る。

そしてそのまま
あたしの顔はフイと横に流れて行った。





―――…あ…




「――…じゃあな。早く寝ろよ。」

「待って!トウマ…」



くしゃり、とあたしの髪を撫でてそこを出て行こうとしたトウマの腕を、思わず掴んでしまった。





…行かないで。


あたし、まだ、戻りたくない。






「どうして――…」



交わる、視線。




どうして―…、ここに来たの?

奏さんと、待ち合わせしてたから?



さっきの、“浮気者”の意味は?


今朝は、あんなに
あたしのこと避けてたのに

急に、優しくなったのは、どうして?




“どうして…”の、その先がいっぱいで

考えが、まとまらない。






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