S・S・S



思わず俯いた頭の上で、小さなため息の漏れる音が聴こえた。



「お前、何も分かってない。」


「――…え?」




「―――……」




トウマの顔が降りてきた瞬間
首筋に、ざわりとした感触が走って

ぴくり、身体が震えた。



耳元で小さく囁かれたその、言葉に


心が、震えた。






「…“ファン”は、大切にしろよ」



なにかをされた訳じゃないのに、

身体の内側を撫でられたような、気がした。



ひとり、残されたホテルのロビー。


さっきまで傍にあったトウマの温もりと声が

いつまでも身体の中に熱を宿して



なんだか、無性に

泣きたく、なった―――…









< 240 / 452 >

この作品をシェア

pagetop