とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
学生であるのは判るのだが、謎が多かった。
20歳そこそこにしてあのカリスマ性ある統括、そしてなにより経済力が凄かった。
メンバーの話に寄ると、ここの機材も全てアランが揃えたらしい。
メンバーから献金を募っている訳でもないし、収入があるとは思えなかった。
『アランは何者なんだろうな…』
『それは完全にタブーだよ、クロウ。
だが、少し前に“GD団”で噂になった事がある。』
『アランがか?』
『ああ、あの歳で数千ポンドをポンと寄付したってな。
親が大物政治家って言うヤツもいたが、株で儲けたって噂が有力だぜ。』
確かに勘も良く、頭もキレるアランなら頷ける。
『クロウ、詮索は禁止だよ。
ニックも勝手な噂をするな。』
突然後ろに現れたアランにビクリと硬直する右京とニックは揃って肩をすくめた。
『そっ…そうだったな。』
そそくさと逃げるニックを右京は睨むと口パクで『裏切り者』と言ってやった。
『じゃあ、クロウ。早速カメラの設置を頼むよ。』
『了解、ボス。』
シンディと話していた虎太郎に声を掛けると、任務へと出掛ける事にした。
途中、『アランはかなりの切れ者だから気をつけろ』と右京は忠告した。
それに対して虎太郎は『突然なんだ?』と首を捻るのだった。